ここ数回、このコラムでは本の売り方について考察してきました。
そこで思い出すことがあります。
『タニタの社員食堂』(530万部)、『超訳ニーチェの言葉』(130万部)『聞く力』(120万部)『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(270万部)
2010年から2012年にかけて、ミリオンセラーとなった作品ですが、出版関係者なら書店で実際によく売れている状態を目の当たりにされたことでしょう。
出版社も著者も違う、4点の作品ですが、ひとつだけ共通点があります。
これらの作品を売る、あるいは売りのばすために、出版社の若手営業部員を指導したカリスマ書店員さんがいるのです。
その方は、「書店発のベストセラー」を作りたいという思いから、若手社員を指導し、4つのミリオンを達成。10万部突破のベストセラーも十数本生み出しています。
その書店員さんが開いていた講座の名前が「ベストセラーs塾」。月1回の講義とディスカッションを6か月続け、塾生自らが立てたミリオンセラー計画書に沿って、実践をしていくというものです。計画書は以下のような内容になっています。
<発売前の準備>
1.プロモーションターゲットの明確化
2. 話題性づくりのためのアプローチ
3. WEBマーケティングの準備と実施
4. テストマーケティングの準備
5. 調査店の選択と販促物の準備
<発売時の施策>
1.調査店の選定とアプローチ
2.テストマーケティングの実践
3. 調査店及び周辺データの収集と解析
4. プレスリリースの準備
5. 重版の検討
<売り伸ばしの施策>
仕掛け売りの全国的な展開をつくる
1.調査店で実績を作る販促グッズの工夫
2. 特定の店での「週間ベスト1位獲得作戦」
3. 売れていることがわかる注文書で受注促進
4. 売れていることがわかる新聞広告掲載
5. チェーン本部・取次への対応強化
6. 3、4、5の実施で拡販の全国的な展開をつくる
私自身も約1年間にわたって指導を受け、さまざまな本の売り方を研究させていただきました。
S塾の方法は、奇策を弄しているわけではありません。正攻法を少しづつ積み上げながら、一気にブレークスルーする機会をうかがうのです。
これを自社のリソースや自分のスキルに照らし合わせて、どう打ち立てて行動していくのかが問われます。
塾とはいうものの、座学よりも実践を重視した内容になっていました。
ただ、今この施策を見て思うのは、本屋さんに足を運ぶ人がまだまだ多かった上での方法論だったのだということです。
数年たって、読者は書店にいなくなりました。スマホを通じてどれだけ自社コンテンツを訴求できるかが勝負の時代です。
時間とともに戦い方は今後も変わっていくと思います。