編集者という仕事をしていると、「本を出したい」という相談を受けることがあります。
例えば、自分の経験や仕事の実務、スキル、知見、メッセージや社会ビジョンなど、本に書きたい内容はさまざまです。
先日もある大学の先生が当社にお越しになり、出版の相談をされました。あーでもない、こーでもないと約2時間話したのち、「で、読者は誰なんですか?」と聞くと「う~ん、いつもそれを聞かれてこまっちゃうんだよな」とおっしゃっていました。
本を出せば、自分の言いたいことが世の中に伝えられる、箔が付く、うまくすれば印税ももらえる、と考えている人も少なくないと思います。
ただ、それは「本を出したい」というニーズではなく、単なる願望に過ぎません。
私がよく言うのは「初めて書く本なら、人生をかけた1冊を書いてください」とお伝えしています。そしてこの1冊の中にあなたのすべてを書き込んでください、とも。
それでないと、読む人には何も伝わりません。
私は商業出版を長くやってきたので、本を出すということは厳しい市場経済の中に商品投入することだと思っています。
ただ、どうしても世の中に伝えたいメッセージがあるということもわかります。そういった場合は、クラウドファウンディングでお金を集め、セルフパブリッシングするという方法もあります。
紙の自費出版なら100万円以上かかるものが、電子書籍ならその何分の一かで済みます。
出版の方法は多様化していますので、「どうしても商業出版」などと考えず、広い視野を持つことをお勧めしています。