著者の手元に入るお金を印税といいます。
昔は長者番付というものがあって、税務当局から年1回公表されていました。その中には実業家や政治家、スポーツ選手とともに、作家部門というものがありました。子供心に、作家はたくさんお金が入るものだなあ、と感じていたものです。
では、ここで少し考えてみてください。
あなたが本を書いたとして、それが思いのほか売れました。印税はいつ支払われるのでしょうか?
これは、出版業界にいる人でないとわからないかもしれません。
実は、本が発売になった翌月には、本の売れ行きとはまったく関係なく支払われるのです。これを発行印税といいます。発行と同時に入るのでこう呼びます。
本は一冊書くのに数年かかることも珍しくありません。しかし、本屋さんで売れるかどうかは出してみなければわからない。また、売れたとしても、本屋さんからお金が戻ってくるのに大変長い時間がかかります。それを待っていたのでは、生活が成り立たなくなる書き手も少なくないのです。そこまで深刻でなくても、お金はなるべく早く支払ってもらうことに越したことはありません。
で、原稿を依頼した出版社が「売れたかどうかは後回しにして、とりあえず発行した分を著者にお支払いする」のです。
でも、そんなに気前よく印税を支払っていては出版社もお金が回りません。そこで取次という中間の流通業者が「売れたかどうかは後回しにして、とりあえず発行した分の売上を出版社に入金する」のです。取次は個々の出版社よりも企業の規模が大きく、金融と物流のプラットフォームを担っています。
これを取次の金融機能といいます。
実はこれが昨今問題となっています。
この発行分の売上が欲しいばかりに、出版社は本来なら刊行しなくてもいい本まで作って売っているという批判があります。
このような本を作ることを粗製乱造といいます。
1日あたりの新刊本の点数は200~300点と書きましたが、本当に必要な本はどれだけあるでしょうか。
わたしたちが電子書籍にたどり着いた理由のひとつがここにあります。