出版業界でよく言われるのが、電子書籍が普及すると紙書籍が売れなくなるのではないか、というカニバリズムの問題があります。
しかし、紙と電子を両方扱っている書店からは、そんな声は上がりません。書店とすれば、紙であろうが、電子であろうが、売上が上がればいい、という考えなのだと思います。
むしろ、問題は優秀な書き手や本好きの読者が減少してしまうことではなでしょうか。
紙書籍を出版しようとした場合、さまざまな高いハードルがあります。私はある出版社に勤めていましたが、新刊書籍の企画会議や部数会議では、編集部も営業部も両方とも厳しい目でその企画を精査します。
著者のそれまでの売上や知名度だけでなく、SNSのフォロワー数や、動画サイトでの再生数なども考慮されます。
紙書籍は少なく見積もっても、商業出版の場合、100万円は軽く超えます。投資対効果が望めなければ、新刊の企画はお蔵入りです。新しい書き手がなかなか現れないのも、このことが大きく関係しています。
一方、電子書籍は初期費用が大幅に抑えられます。紙の仕入れや印刷、製本といった工程がないからです。しかも、通信環境がととのっていれば、購入はいつでもどこでも可能。いいこと尽くめといえます。
無名の著者が本を出版するのにも、紙に比べればはるかにハードルが低いと言えます。
そんな著者にはデジタルファースト出版という方法があります。
次回はそれを詳しく説明します。
電子書籍が紙書籍を救うのではないか、という意味もわかると思います。