では、不定期の新刊書籍はどのように売っていけばいいのでしょうか。
シリーズものや著名な作家の作品と違い、単発の作品は売りづらいのが定説です。
ここでは2017年に30万部超のベストセラーとなった『うつヌケ』(田中圭 KADOKAWA)について考察します。
この作品は当初、ウェブメディアである「note」(https://note.mu/)で連載が始まりました。
それが単行本になる際のプロモーションは以下の通りです。
①2017年1月19日発売の予定の本。12月27日にPRタイムスに記事を配信。PRタイムスはニュースリリース配信ではトップの実績があり、他のメディアへの露出が多いのが特徴
② 年末年始にツイッターほかSNSで著者や編集部が情報を拡散
③ 特に1話8ページをツイッターでそのまま1ツイートとして配信
④ 正月明けにはAmazon100位以内にランクイン
⑤ 発売前から他メディアが取材申請
⑥ ウェブメディアを重視。なぜなら記者が情報検索したときに記事がないと不安だから
⑦ 発売前に重版するくらいの注文があったがあえてしなかった。本が足りない状態をわざと作り、物量よりも情報量の流通を重視した
⑧ 本がないことで「ない」という情報を流せる。その後「重版する」という情報を流すことでさらに情報量を増やす
⑨ 当該作品以外の「闘病マンガフェア」を松戸の書店で開催。その写真とフェアの内容をリリースにして配信。産経新聞が紙面で大きく取り上げてくれる。記者が取材にこなくてもいいくらいに充実した内容のリリースだった
⑩ サイン色紙300枚で店頭のスペースをとる
⑪ 他社の関連本に田中圭氏の帯の言葉を使ってもらい、文庫や新書のコーナーに『うつヌケ』を露出
⑫ 売上ピークは発売4ヵ月目であった
また、これらを実施するにあたっては編集部だけではなく、宣伝や書店営業とも緊密に連携をとったとのことです。
どの出版社もたくさん売るためにはこのようなことをやっているとは思いますが、深く考え抜かれた戦略の上に成功した好例かもしれません。
KADOKAWAさんは以前からパブリシティの部署を設け、独自のPR方法を構築してきた歴史があります。
一朝一夕にはできない施策ですが、大いに参考になると思います。