Column & interview

コラム

BC号航海日誌32 なぜこの人たちは本を買ってくれるのか?(2)

少し時間が空いてしまいましたが、電子書籍も含めた、「本を売る」ということに再度フォーカスしたいと思います。

本を売るために必要なのはコミュニティだと書きました。

コミュニティは最近流行りの言葉ですが、これはSNSの登場と大いに関係しています。昔の言い方をすれば、ファンクラブと言ってもいいでしょう。

ファンクラブというのは大変ありがたいもので、例えばタレントでもミュージシャンでも、新曲を出せば迷わず買ってくれますし、コンサートやイベントを開けば必ずチケットを購入してくれます。また、グッズ販売やそもそものファンクラブの会費も支払ってくれます。
しかも、会員数がはっきりわかるので、どのくらいの商品やチケットを事前に用意すればいいのか、おおよその目安がつきます。

たくさん買ってもらうにはタレントの魅力もさることながら、ファンクラブを維持するためのさまざまな仕掛けや工夫が必要となります。

今時のマーケティング用語でいえばCRM(カスタマーリレーションマネジメント)ということになります。

本の世界でタレントに相当するのは、いうまでもなく著者、あるいはコンテンツそのものです。この著者やコンテンツを核としてコミュニティを作るようにCRMを設計していけばいいのです。

今、CRMのコミュニケーション手段として有効なのは以下の5つです。

①有料の広告(4媒体、ネット広告、屋外広告など)

②自社サイト

③イベント(サイン会、講演会含む)

①はどの出版社も台所事情が苦しく、現実的な打ち手とはいえません。また、自社サイトも、他の出版物の関係で、特定の作品だけをピックアップするのは難しいでしょう。③も結局は費用が掛かります。

すると、

④パブリシティ

⑤SNS(ツイッター、Facebook、LINE、YouTubeなど)

を充実させることが有効な手段となっていきます。

実際にどんな形でSNSが利用されているのか、大変参考になる実例があります。

それが『宇宙兄弟』の作者、小山宙哉さんのSNSです。

今、運用しているのは、公式サイト、ツイッター、Facebook、LINE BLOG、公式のLINEアカウント、Instagram、メルマガの7つ(!)。もちろん、マネジメント会社のコルクのスタッフが動かしているのですが、ファンとの接点をさまざまな形で作り、しかも飽きさせないように、SNSごとに工夫して運用しています。

ひとつの作品でここまでやるのは無理だ、と感じているかもしれませんが、ここまでやるから、爆発的な売れ行きがあるのです。むしろ、紙の書籍ならこれ以上のことやっている出版社さんや担当者の方もいるのではないでしょうか。電子書籍でもこのようなコミュニティが維持できていれば、どれだけのDLが期待できるのかが把握できます。

単行本の発売は3か月に1回。その間を埋めるのが、このSNSを使ったコミュニティ運営なのです。

実際にどのように運営しているかは、興味を持ったみなさんが、小山さんのSNSのフォロワーになってみるのが一番わかりやすいと思います。

筆者もある書籍でこのことを知り、フォロワーとなっています。

小山さんのように定期的に刊行物があるから、コミュニティ維持がしやすいと考えるかもしれません。

次回コラムでは、不定期の新刊書籍の場合で見ていきます。

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