Column & interview

インタビュー

電子書籍ビジネス最新事情
O2O Book Biz株式会社代表取締役社長 落合 早苗氏

出版不況と言われて久しい現在でも、右肩上がりで市場規模を拡大し続ける電子書籍業界。スマートフォンやタブレットなどで本を読むことが当たり前になったこの時代に、電子書籍ビジネスはどのような戦略でのぞむべきなのでしょうか。電子書籍の法人向けコンサルティングやマーケティングなどを手がけるO2O Book Biz社長の落合早苗氏に、2017年の電子書籍市場の概況や今後の電子書籍業界などについて聞きました。

2017年の電子書籍市場は?

市場規模は2200億円超えと堅調な伸び  “AI”活用が本格化?

はじめに、2017年の電子書籍の市場概況について教えてください。

データを見る限りでは、順調な推移を辿っています。出版科学研究所の調査データとインプレスの調査データを見ていますが、どちらもほぼ予測通りに推移しているという感覚ですね。2017年12月末締めのデータでは、雑誌以外の数字で2200億円を少し超え、2210億前後となる見込みです。なお、2016年度の数字は、電子書籍だけで1976億円でした。

出典:出版科学研究所

 

出典:インプレス総合研究所

内訳は、圧倒的にコミックが占めていると思います。ただ、各書店のベストセラー作品を見ると、限りなく紙の書籍のラインアップと近くなってきていることが分かります。電子書籍を購入している方たちは、紙の本の購入層と重複しているのではないでしょうか。紙の本の読者がデジタル化された書籍も読むようになったのか、あるいは電子書籍の読者が紙の本も読むようになったのかもしれません。

購入層を年代的にみると、女性が20~30代、男性だと30~40代が一番厚い層になり、これはリアル書店で読む層と重なります。これまで買っていた紙のうち、一部を電子で買う習慣が出始めてきたのかなと思います。ただ、アンケートの取り方の問題があり、「何をもって電子書籍か」という意識が年代によって違ってくることに注意する必要はあるでしょう。たとえば、“なろう”で読んでいます、とか。そうした方は、電子書籍を読んでいる感覚がない場合があるので、業界内で「電子書籍」と呼んでいるものと、「一般の人が感じている電子書籍」では、若干乖離があるのかなとも思います。

市場の伸びとしては、堅調だと思います。ただ、雑誌の伸びが鈍いですね。NTTドコモが運営している電子雑誌の読み放題サービス「dマガジン」は好調でしたが、「dマガジン」1強の状態が続いており、それを打ち破る競合がいません。なお、コミック系以外の雑誌では、「FRIDAY」が比較的好調のようですね。雑誌は、以前は読者が“暇つぶし”のような感覚で買っていましたが、今では暇つぶしのやり方自体が変わってきており、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスで完結できるようになってきていますので、それがそのまま電子媒体に移行してきているのではないか、と見ています。

現状、電子書籍の利用環境では、どのデバイスの利用が最も多いのでしょう?

今は圧倒的にスマホですね。さまざまな電子書籍ストアへヒアリングした結果を聞き取る限り、スマホが強いです。もちろん、タブレットもなくはないのですが。「dマガジン」などではタブレットで読まれる比率も高くなりますが、いわゆる「書籍」では、圧倒的にスマホです。文芸作品などもスマホで読まれているようですね。というのも、たとえばソニーが運営する電子書籍・電子コミックストア「Reader Store(リーダーストア)」は、昔から“文字モノ”の売り上げが好調です。ソニーの電子書籍リーダー「Reader」は、日本ではAmazonが提供している電子書籍関連サービス「kindle(キンドル)」よりも早くから電子書籍端末をリリースしているサービスなので、文字モノが好きな購読者が根付いているのだと思います。

ただ、サービス会社のシェアでみると、ジャンルにもよりますが、圧倒的に「kindle」が強いですね。強いて次を挙げるとするなら、楽天の提供する「kobo(コボ)」。また、版元によってはAppleの「iBooks(アイブックス)」などをお答えになるケースもあります。紀伊国屋や丸善など、いわゆる書店が提供している電子書籍サービスについては、現状ではあまり業界で騒がれてはいません。これらのストアは、戦略として、あくまでも“紙ありき”のサービスとして提供している形なのだろうと思います。

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